無名人時計主宰の書斎
PROFILE

栗林康弘(qbc)

聞くことは愛すること。

無名人インタビュー主宰 栗林康弘(qbc)
無名人インタビュー主宰。聞く学校校長。2020年2月11日から、有名でも無名でも関係なく、872本、60分ずつ話を聞いてきました。
872
聞いた

基本は1本60分。現在・過去・未来を20分ずつ

1,518
チームで公開した

本編1,298本/企画220本

132
制作に関わった人

聞き手・編集者として。のべ

「聞いた」は2026年6月30日時点。チームの本数と制作に関わった人は2026年8月1日時点です。

INTERVIEW

聞き手:シロナ(2025年9月30日/2026年9月13日)

現在(2026年9月13日の聞き取り)

――「聞くことは愛すること」という言葉は、いつ出てきたのですか。

実は、誰かから言われた気がするんです。インタビューが終わったあとの雑談で、「栗林さんの聞き方は愛ですね。聞くことは愛することですね」と。いつだったかは思い出せないんですが、2023年の暮れには自分の日記に書いていました。

――その日記では、聞き方の本を書いていました。

結局、完成しませんでした。満足度60%くらいのものは存在しますが、出していません。「こうするべきだ」というものが日々変わってしまうのと、聞くことに関する発見が日々続いていたのと、落ち着いて書く時間がない。2年目からずっとそんな感じで、5年経ちました。

――本の代わりに、聞く学校ができた。

チームになったことで、自分の聞き方に「いい」「悪い」の意見をもらえるようになった。自分以外の聞き方を見ることもできた。聞く方法を深めるには、制作チーム以外の人にも「聞くことを考える人」として参加してもらう必要がある。そのために作ったのが聞く学校です。教える場所というより、みんなで考える場所という位置づけのほうが強いです。

イベント会場で自撮りする栗林康弘

――平聴(フラットリスニング)という言葉は、どうやってできたのですか。

2022年3月に、話の聞き方講座のお試し版を一度やりました。その結びが「相手にも自分にも中心をおかず、未来へ会話を向ける」。2023年7月の講座では「ニュートラル」と呼んでいて、軸を話し手にも聞き手にも置かない、という意味でした。

インタビューは、自分の中にも相手の中にもない発想にたどり着ける。それを成立させる条件は何かと考えると、自分に対しても相手に対してもフラットな状態だった。相手に対してだけフラットなのではなく、自分に対してもフラット。そうすると中心が壊れて、二人の間に来る。実践としてフラットリスニングと呼ぶようになり、2026年、傾聴と並ぶ言葉として「平聴」の漢字をあてました。

――傾聴研修とは、何が違いますか。

カウンセリングのアクティブリスニングは、マイナスの状態をゼロに持ってくる。治療が目的です。アサーションは、相手を否定せずに自分の意見を通したい。フラットリスニングはゴールを目指していません。話をする、話を聞く、ということが行われるためのマナーです。

それができると何が起きるか。話す・聞くがスムーズになる。聞いてくれて幸せだ、話してくれて幸せだ、というコミュニケーションの素の部分が出てくる。それが土台にあって、その上に傾聴やアサーションといった技法が乗る。そう考えたほうがいいと思うようになりました。

過去(2025年9月30日の聞き取り)

――子どもの頃は、どんな子でしたか。

おとなしかったと思います。トイレに行くと先生に言えない。授業が終わってみんなが移動するのについていったら、体操クラブで「君は違うよ」と言われる。ぼーっとしていたのかもしれません。ブロック遊びと、祖母が買ってくれた世界名作集を読むのが好きで、幼稚園で字が読めました。いとこから送られてくる漫画と、ファミコン。

小5か小6から小説を書き始めて、そこから内にこもる時期になりました。考えすぎる人になって、人付き合いが減った。高校は部活にも入らず、ゲーム、アニメ、漫画、小説、音楽、映画。それで小説を書く。

――どんな小説を書いていたのですか。

最初は剣と魔法のファンタジー。中高で星新一と筒井康隆が好きになって、ショートショートのSF。徐々に人間関係を書くようになって、太宰治、芥川龍之介の短編、漱石なら『夢十夜』。20代は千字の小説を書いていました。短い中に仕掛けをするのが好きだった。携帯小説が流行った頃に小さな賞をもらって、アンソロジーに載せてもらったこともあります。

神保町の東方書店の前に立つ栗林康弘

――小説から、聞くことへ。

30手前で、自分が書くものは万人受けしないと分かっていました。「共感できていいね」ではなく、「気持ち悪いからなんとなく読んでしまう」という感想が来る。同じ頃、2ちゃんねるで電車男が流行って、創作をしなくても普通の人の人生がドラマになる、と思った。

そして2011年の震災。私はその前に、過去の津波を書いたドキュメンタリー小説を読んでいました。その作家と縁のある人が、たまたま近くにいたんです。会社のテレビで津波を見ながら、その人が「こんな津波が来るなんて」と言った。私はその本を読んでいたから知っていた。血縁にすら伝わっていない。小説が血縁にも伝わらないなら、その作品に意味はないんじゃないか。そこから小説への不信感が少しずつ積み上がって、30代後半は仕事に打ち込んでいました。

――2020年2月11日、無名人インタビューを始めました。

noteに昔の小説を上げていた中で、急に始めました。小説はいいねがつくだけで終わってしまう。同じ時間を共有して喋る、双方向で同時性のあるものをやりたかった。始めたらすぐ応募があって、すぐインタビューできた。

やってみると、小説を書くのとすごく似ていた。小説は、この人はどんな服を着て、どんな気持ちで動いているか、その順番を制御して感動やドラマを作る。インタビューも「その時どんな服装でしたか」「目の前に何が映っていましたか」「どう思いましたか」「それからどうなりましたか」。順番を質問として投げかけているだけ。でも他人の脳を使って他人の人生を並べ替えるから、自分では思いもよらない物語が展開する。とにかく面白かった。

――ご自身の性格は。

好奇心は強い。でも人付き合いは苦手で、それが根本だと思います。だから人と付き合うのは多少無理をしている。知りたいという欲求はあるから、インタビューをやる。人とコミュニケーションするための理由が必要で、その大義名分がインタビューです。インタビューがないと、多くの人とこんな遠くまで付き合えない。

――始めてから、変わったことは。

会社を辞めて独立して、人付き合いがほぼインタビュー関連の人になりました。会社に戻る選択肢もあったんですが、7割サラリーマン、3割インタビューにするか、と考えたときに、周囲からの注目を考えるとインタビューをやるしかなかった。

――聞く人と、聞かれる人。それぞれに何がありますか。

聞く人は、自分の知らない考え方に出会う。そのとき、自分の新しい感受性も見つかる。「こういう考え方に出会うと、自分はこう感じるんだ」と。相手が人生を語ってくれる、信頼されているという安心もある。

聞かれる人は、まったく未知の他人から聞かれることで、「自分はこんなことを考えていたんだ」が出てくる。真摯に聞いてくれる人がいる、それだけで幸せを感じられる。対になる価値を、同じ時間、同じ空間で共有できるのがインタビューの良さです。

――水に打たれている写真があります。(2026年9月13日)

2022年頃、占い師さんに連れられてお寺に行って、水行を受けました。滝ではなく、蛇口から出る水に打たれる。水の音と、住職さんのお経しか聞こえない。冷たくて心臓がきゅっとなって、呼吸が苦しくて、もう出たいと思う。そのときに、このお経に従っていればいいんだ、と思ったんです。聞いていればいい。それで落ち着いた。

意味の分からない音でも、聞いていくと道しるべになる。声を聞くこと自体が重要で、声を発することが人の道しるべになる。極限状態で感じたから、強く残っています。

三軒茶屋の駅前に目青不動があって、よく行きます。話を聞いていると、いろんな人の気持ちが乗っかってくる。フラットリスニングでかからないようにはしていても、かかってくる。悪い状態で人の話は聞けないので、コンディションを保つために、良い気の場所へ。

お寺で水行を受ける栗林康弘三軒茶屋の目青不動(教学院)の本堂

未来

――インタビューを一言で言うと。(2025年9月30日)

自分にとっては仕事です。使命感はある。自分の性格と、今までやってきた経験が結実した。これをこなせるのは、いま自分しかいないだろう、という意味での仕事。

――このページを読む人に、一つだけ。(2026年9月13日)

聞くことは、面白さと、楽しさと、気持ちよさと、人生を変える力を持っていて、生きることの土台にあるものだと思います。学習する土台になる。楽しさのベースになる。だから、なるべく早く、聞くことの土台を作ってほしい。

インタビューはあくまで入り口です。聞くことを覚えることが一番重要で、それ以外は全部、それを宣伝するための装飾品です。日常生活での「聞く」は、楽しさや情報交換が優先された「聞く」で、相手の内面に二人で一緒にダイブするような「聞く」は、なかなか覚えられません。聞くことを覚えましょう。それが伝えたいことです。

人生は不可解なので、その不可解なものを美味しくいただくための調理方法がインタビューです。だからインタビューが面白い。

REQUEST

依頼できること

インタビュー制作/講演・登壇/研修(企業・学校)/取材・寄稿

研修について。傾聴研修やアサーション研修とは目的が違います。フラットリスニングはゴールを目指さない会話のマナーで、話す・聞くがスムーズになる土台を作ります。1時間で終わらせず、その後どう使うかまで一緒に考えます。

これまで:駒澤大学 社会学ゼミ ワークショップ(2025年7月)/島根県海士町 傾聴座談会(2024年2月)

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